心の病を抱える人の気持ちをほぐす「アートの時間」
特定非営利活動法人八王子パオの会 地域活動支援センターパオ
活動エリア | 東京都八王子市 |
---|
ジャンル | 医療・福祉 学術・文化・芸術・スポーツ |
---|
パオには、日々いろいろな生きづらさを抱えた人たちが通ってきます。毎週、月曜日と木曜日は「アートの時間」です。大きな机に向かい合って黙々と絵を描いている人たちがいます。詩を書いているひとのそばに、縫い物をしながら悩みを話すひとがいて、その隣には粘土を何かつくるひとがいます。パソコンで写真を選ぶひとの傍らで自分の生い立ちを語るひとがいて、静かに耳を傾けている人もいます。無理をしないでそこにいると、気がついたら少し元気になっている。「疲れたときは疲れたままで」それが合言葉でしょうか。
それぞれ自分のペースで作品をつくり、年に1回「パオ作品展」を開催しています。絵画・造形・詩・写真などの作品の他に、パフォーマンス(弾き語り、朗読、ダンスなど)の発表に力を入れているメンバーもいます。
現代では、10人に1人が何らかの心の病を持つといわれています。その背景には、過剰なストレスや希薄になった人間関係の狭間の中で、一人悩み苦しむ人々の姿がみえてきます。心の病は特別な病気ではなく、誰もなり得る可能性があります。
周囲を見渡せば時代の流れのなかで、障害当事者が病院を退院し、暮らす場所や働く場が徐々にではありますが充実してきました。しかしながら、地域のなかで孤立せずに自分らしく暮らし続けることは容易なことではありません。
パオは、障害当事者がお互いのちがいを認め合いながら、それぞれが生き甲斐や自分らしさを見つけていけたらと考えています。そのために、プログラムはできるだけゆったりとしたものとし、誰もが参加しやすい活動形態をとっています。
それぞれが興味のあることや、取り組みたいことをやりながら、じっくりとエネルギーを蓄え、日々の暮らしのリズムをつくり、新しいことやチャレンジできるような場をめざしています。また地域で暮らしていくための情報提供と、当事者同士の語らい、支え合い(ピアサポート)を大事にしています。
私は障害のある方たちの芸術活動に興味を持ち、この仕事に就きました。アートの時間では、私もメンバーの一員として主体的に絵を描き、物をつくることを大事にしています。パオでは支援・被支援という枠組みを超えて、誰もが孤立せずに人のなかに居ることを大事に活動しています。アート活動もまた、そのひとつのかたちです。人に心を開き、信頼関係をつくることはすぐには難しくとも、それぞれが頑張っていることを認め合い、励まし合うことができます。それぞれのちがいや良さを自然と受け入れ、自分を開放し表現していきます。また、パオの強みはピア(ともに)という考え方です。そこには同じ当事者にしか分かり得ない繋がりや共感があります。誰かの悩みが深いとき、また緊張感が漂う場面でも、当事者ならではのユーモアと場の力でその場の雰囲気が変わっていきます。正解はひとつではない。アートとピアサポートの力に可能性を感じています。
障害当事者が、病気に対する差別や偏見を気にせずに気軽に通うことが出来る場が地域のなかに増えていくことを願います。また、暮らしのなかの困りごとを家族または一人で抱え込まずに、気軽に相談できる「緩やかなたくさんの関係」がある社会を望みます。パオとしては、障害当事者がより自分の可能性を生かし、主体的に地域で暮らしを継続していける様に、情報収集や環境整備に力を入れていきたいです。また、アート活動を通じて障害のある人たちの芸術活動や、一人ひとりの人間の営みにより深く触れて貰えたらと思います。
●長期に渡り精神的になかなか安定しない病状を抱えながらも、地域で何とか生活を送る方たちが通ってくるパオ。その運営は、作業や製品販売等で自己資金を稼ぐことが難しく、行政からの少ない補助金の中で何とか活動しているのが実情です。これからの活動をより充実させていくために、財政的な支援を幅広く皆様に呼び掛けたいと思っております。是非とも「パオの会」の賛助会員になって頂き、共に支えて頂きますようよろしくお願い申し上げます。
★会費: 一口 3,000円
郵便振替: 東京00190-9-195774 名称 : パオの会
●パオの「アートの時間」に興味関心がある一般の方の見学・参加を受け入れています。また年に1回開催しています『パオ作品展』の搬入・搬出をお手伝いして下さる方も募集しています。また使わなくなった画材や余り毛糸も集めています。詳しくはパオまでお問合せください。
取材者のコメント | |
---|---|
古川勇樹 | 心の病を抱えた人たちが、アートの制作作業をしながら他の人たちと一緒に過ごす場所を提供するという活動をされている団体である。外出や他人と関わりを持つことに後ろ向きになりがちな状態の人たちにとって、何か作業をしながら、手を動かしながら、緩やかに他の人たちと時間と空間を共にするという距離感が、無理をせずにいられる心地よさとなっているのではないかと思った。また、アート作品の制作や発表という活動が、参加者にとって、自分を表現したり、お互いの個性や頑張りを認め合ったり、自分らしさの発見や人間関係の構築につながっていることが伝わってきた。 |
団体・プロジェクトの概要 | |
---|---|
代表者 | 理事長 梅林和夫 |
住所 | 東京都八王子市田町4-4 |
TEL/FAX | 042-655-2844 |
お問い合せ | paonewsjp@yahoo.co.jp |
URL | http://paonewsjp.exblog.jp/ |
主な受賞歴や実績
パオは、モンゴルの遊牧民族の移動式住居の名前である「パオ」の様に状況に応じ、どこにでも住んでしまう自由さをモットーに命名されました。福祉制度の谷間に取り残され生きづらさを感じている障害当事者たちが緩やかに社会や人とのつながりを取り戻しながらともに成長していくことを目的にと活動してきました。主にアート活動とピアサポート(当事者同士の情報交換と支え合い)を柱にユニークな試みを実践しています。現在は地域活動支援センターⅢ型として、八王子市在住の20歳以上の方で、精神科通院をされている方を対象に活動を行っています。
1994(H6) 5人ほどの小さな拠点として、八王子市子安町に誕生する。
1995(H7) 東京都と八王子市より作業所の補助金を受けるようになる。
絵画教室などの表現活動が始まる。
2000(H12) 11月 現在の場所(八王子市田町)へ移転する。
場所が広くなり、いろいろなグループ活動が模索される。
2002(H14) アートの講師(風姫)とともに定期的な「アートの時間」が始まる。
パオ作品展をほぼ毎年、開催するようになる。
2013(H23) 2月 『特定非営利活動法人 八王子パオの会』を設立し、地域活動支援センターパオとなる。