日本の伝統文化を、国内外に発信・継承する
特定非営利活動法人日本伝統文化振興機構(JTCO)
活動エリア | 全国 |
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ジャンル | その他 地域活性化 観光 |
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私どもの活動の最終ゴールは、「地域経済の活性化」ということにあります。「伝統文化」をキーワードに、地域の隠れた名品や文化資産に光を当て、商品をお求めいただいたり、実際に訪れていただいたりすることで、地域に住む方々がこれからもその土地で豊かな文化を育んで行っていただけるような基盤を作ることが最終目的となります。
これまでに最も注力してきたのは、伝統工芸品に関する情報収集・発信と、伝統工芸品の企画販売です。情報については、全国の伝統工芸品の組合やそれを管理する地方自治体、もしくは製造・販売企業さまに記事をご提供いただいており、2015年7月に300件の登録を達成しました。皆さんがお住まいの地域にも、あまり知られていない隠れた名品があるかもしれませんので、ぜひご覧になってみてください。
JTCO『伝統工芸品館』
http://www.jtco.or.jp/japanese-crafts/index.html
商品企画・販売については、職人さんに同じ工法を使用した新しいデザインの商品をご提案して、制作していただいています。長い年月の中で継承されてきた技術で作られた商品は、そのままでもとても美しいものですが、例えば皮革工芸品であれば、洋服のときにも違和感なくお洒落にお持ちいただけるような商品の開発を心掛けています。私どもでご提案した柄で、コレクターの方もいらっしゃるほど人気のあるものもあります。
オンラインショップ『和遊苑』
http://wayouen.jp/
また、良いものを作るだけでなく、どのように販売するかも同じように重要です。これまで多くの職人さんや組合の方々にお話を伺って、原材料や道具の調達と並ぶもっとも大きな課題は販路の開拓だということがわかりました。たとえば長年お付き合いがあった問屋さんが廃業してしまうと、もう販売する手立てがなくなってしまうのです。最近ではネットで直販されているものも増えてきていますが、そこまで手が回らない職人さん、組合さまも多いと思いますので、オンラインショップでの販売や、新しい販路の開拓といったところを当機構でお手伝いできればと考えております。
国内ではまだ常設店舗はありませんが、定期的に歌舞伎座の地下2階にある木挽町広場にて催事を行っています。毎回、テーマに合わせた出店企業さまを募っておりますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください(出店は審査を経て決定させていただいております)。
海外では、2013年の7月に初めてパリのジャパンエキスポに出店しました。その時の反応がとても良く、海外での販売にも期待が持てると思い、その後、日本出版貿易株式会社さまのご協力を得て、パリとロンドンにて常設販売を始めました。とても興味深いのは、国によって色柄やアイテムの売れ筋が異なるということです。例えば、日本やパリでは華やかな色柄が良く売れますが、ロンドンでは単色の落ち着いた色柄が真っ先に売れていきます。こういったことはやってみないとわからなかったことです。伝統工芸品業界でも、マーケティングの視点を取り入れて、ターゲット顧客の嗜好やトレンドを反映した商品開発に取り組むことが必要になってきていると思います。当機構では、このような点でもサポートしていきたいと考えております。
正直なところ、私は若いころ、何でも型に嵌めようとする日本の社会や文化が好きではありませんでした。中学・高校はミッションスクールで英語や世界史を一生懸命勉強し、大学では外国語学部に在籍して、将来日本を出たら二度と戻ってこないつもりでした。ところが、大学時代の海外旅行や、社会人になってからの海外生活で出会った方々から、日本という国や日本人がどれだけ海外で信頼され、評価されているかということを思い知ることになるのです。自分がそのような方々と比べて全く日本のことを知らなかったことを本当に恥ずかしく思い、帰国してから日本文化について勉強するようになったのがきっかけです。
震災時の被災者の方の落ち着いた振る舞いや、W杯のときにスタンドに塵ひとつ残さなかったサポーターの心がけなどが海外のメディアで大きく取り上げられたのは記憶に新しいところですが、これらは日本人が子どものころから躾けられた普段の行動の積み重ねなのだと思います。実際、海外の方が評価してくださるのは、日本の技術や経済発展もさることながら、時間や約束を守る、嘘をついたりズルをしたりしない、清潔である、など、私たちからすればごく普通のことばかりでした。もちろん日本人の中にもそうでない人もいますが、平均的な国民がこういった範疇に入るということは、世界を見渡せば特別なことなのかもしれません。
明治以降、日本の人材が科学技術や文化芸術など多くの分野で優れた業績を残してきたのも、やはり過去からの積み重ねの部分が大きいのではないかと思います。技術やデザインに関していえば、幕末から明治初期にかけて日本を訪れた西洋人が書き残したものの中に、台所で使われている生活用品の美しさ、おもちゃの種類の多さや精巧さについての記述があります。当時の日本の大工さんは、椅子やテーブルなどの西洋家具を見ただけで、数時間後には同じようなものを作ってしまう創造性と技能があったようで、外国人を大いに驚かせました。「用の美」と言われるように、普段使いの日用品であっても作り手がよく研究し、丁寧に美しく作るという伝統が、工業製品にも生きているのだと思います。
現在は過去の積み重ねであり、その積み重ね=伝統を理解することで、私たち日本人の強みと弱みを知り、これから自分たちの国や文化を持続的に発展させていくためにはどうすればよいのか、ということを考えるきっかけにもなると思います。
また、自分自身が海外に行って思うのは、首都圏や都会はどの国も違いこそあれ似たようなところが多く、その国の本当の良さを知りたいと思ったら、やはり地方に行くべきだということです。その土地の風土の中で人々がどのように生きてきたのか、ということに思いを馳せることで、その地域で暮らす人々の叡智に感動を覚えることもあります。
ところが、もうかなり前から日本の地方は過疎化が進んでおり、郷土文化の継承に支障が出ている地域も増えてきています。多様な地方文化の継承・発展は、そのまま日本文化の豊かさにもつながってきます。古いものでは2,000年の間継承されていると言われる郷土文化もあり、その火を絶やさないよう、より多くの方に関心を持っていただきたいと考えています。
オンラインショップをご利用いただいたお客さまから、お届けした伝統工芸品についてかなりの頻度で喜びのメールをいただいています。「こんな素晴らしい伝統工芸があるのは知らなかった」「とても美しくて使いやすく、ずっと大切に使います」等々。また、産地やデパートの催事などでお買い求めになり、長い間使ってくださった方が、まったく同じものが欲しいと改めてオンラインショップでお買い上げくださったり、パーツを交換して差し上げたご年配の方から、「これで一生使えます」と喜んでいただいたりしたこともあります。
数百年、千年と受け継がれてきた技術は、やはり確かなものであり、その素晴らしさをお伝えできたと、また次の千年その技術が続いていくためのささやかな橋渡しができたと感じたとき、この活動に意義が与えられたと感じます。
また、英語サイトを運営していることもあり、最近では海外からのお問い合わせも増えております。かなりコアな日本ファンの方なのか、陶芸の長期研修をしたいという方や、郷土のお祭りを観たいという方など、お問い合わせの対応をさせていただく中で、私どもも新たな発見があり、勉強させていただいております。既述のように、海外でもその国の真髄は都会よりも地方で感じるものだと思いますので、海外のお客さまが日本の郷土文化に関心をお寄せいただいていることを、とてもうれしく思います。
これまでの5年間は、いわば活動の準備期間で、協力団体さまにお声掛けしたり、商品のテスト販売をしたりしてきました。おかげさまで、活動の基盤もだいぶ整ってきましたので、これからは着実に設立趣旨に近づけるような活動に本格的に取り組んで行きたいと考えております。
短期的には、現在のWebサイトをスマートフォンでも快適にお使いいただけるように改修し、旅行の際に便利にお使いいただけるサイトにします。また、オンラインショップも改修し、お取扱い商品の幅を拡げられるようにします。
中期的には、国内外でのオンライン・オフラインでの商品販売体制の拡充や、マーケティングに取り組んで行きます。また、地域の観光協会や商工会議所と協力して、国内外のより多くの方々に地域の文化を体験していただけるような流れを作っていきたいと考えています。
長期的には、同様の取り組みをほかの国に広げ、地域文化の多様性の維持と、人々の文化に対する相互理解に貢献するのが目標です。
私も海外でしばらく生活して初めて、日本という国の良さや、伝えられてきた文化の素晴らしさに気づかされたので、日本だけで生活しているとその価値に気付く機会がなかなかないかもしれません。年中行事を家庭で祝う場合でも、習慣として門松や注連縄を買ってきたり、お雛さまを飾ったりしている場合がほとんどだと思いますが、過去に遡ってその本来の意味を紐解き、心に留めておくことで、「ハレ」の日を迎える心の在り方が変わり、より気持ちを込めて生活の彩りや人生の区切りとすることができるのではないかと思います。ですので、まずは私たち日本人一人一人が文化の継承者として、伝えられてきた文化の意味を理解し、現在や将来の状況に合わせて伝えていくことが必要なのではと考えています。
しかしながら、よく認識していただきたいのは「文化が素晴らしい」=「文化が優れている」ということではないということです。他国の文化は、日本の文化と同じように素晴らしいのです。ご存知のとおり、日本文化は大陸からの渡来人や、日本の使節が他国から学んだことを重要な基盤として発展してきています。人類が営々と築いてきた文化資産の一つが日本文化なのです。日本文化を理解することが、国粋主義に傾倒する方向ではなく、同時に他国の文化との相違を考察し、理解することに発展していければよいと思います。
もし私たちの文化の中に、文化や信条の違いを超える共通の価値や美しさがあるのであれば、ぜひ多くの人に知っていただき、次世代に受け継いで行ければと思います。私たちの活動は、そのような世界共通の善や美しさを探し求める旅でもあります。ともにそんな旅をしたい、と思われる方に、ぜひ当機構の活動にご参加いただきたいと考えております。
現在、多くのボランティアの方々が私どものWebサイトの翻訳事業に携わってくださり、日本文化の外国語での発信に多大な貢献をしてくださっています。最近では、おかげさまで掲載記事数も増えてまいりましたので、Webサイト運営にご協力いただけるボランティアスタッフを募集しております。ご興味をいただけた方は、ぜひお問い合わせください。
取材者のコメント | |
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古川勇樹 |
日本の伝統的な工芸品やその文化を継承するだけではなく、それらを海外にも発信するという、先進的、かつグローバルな活動は多岐にわたり、様々な影響を日本国内外に及ぼしている。 ボランティアスタッフも充実しており、様々な面でも細やかな配慮がされている点は驚くほどだ。 古来から脈々と受け継がれてきた、日本の伝統文化を、市民の視点から国内外に発信できるよう、今後の活動に大いに期待できる団体である。 |
団体・プロジェクトの概要 | |
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代表者 | 小坂典子 |
住所 | 東京都港区愛宕1-3-2-1401 |
TEL/FAX | 03-3431-5030 / 03-6450-1555 |
お問い合せ | info@jtco.or.jp |
URL | http://www.jtco.or.jp/ |
主な受賞歴や実績
2010年 伝統文化・伝統工芸品に関する情報収集・発信のためのWebサイトの開設
2015年7月、記事提供協力団体400件達成
2011年 伝統工芸品販売のためのオンラインショップを開設
2012年 伝統技術を利用した企画商品の販売開始(姫革細工・印伝等)
2013年7月 パリ・ジャパンエキスポに出店(会期中のみ)
同9月 英語サイトをリリース
同10月 銀座・歌舞伎座に出店(1か月)
2014年4月 パリ日本文化会館にて常設販売開始
同6月 英語版オンラインショップを開設
2015年4月 ロンドンJPBOOKSにて常設販売開始
同6月 銀座・歌舞伎座にて催事開催・出店(1か月)
同7~8月 銀座・歌舞伎座にて金沢フェア開催予定(1週間程度)
以降、「伝統文化・地域文化の発信」をコンセプトとした催事を定期的に実施する予定
伝統文化・伝統工芸品に関する情報収集・発信
上記に関する各種催しの企画・運営
伝統工芸品の企画・販売